『抑うつ気分』と『抑うつ状態』の違い
嫌な事・悲しい事があった時には「憂鬱である」「落ち込む」などの一時的な気分の落ち込みを『抑うつ気分』と言います。これは健全な精神活動です。通常であれば時間の経過や気分転換で改善されます。
この抑うつ気分が改善されずに続いたり、精神(せいしん)と身体(からだ)の両方にいろいろな症状が現われます。この状態を『抑うつ状態』と言います。
※「うつ状態」や「抑うつ状態」は基本的には同じ意味で、明確な基準はありませんが一時的な気分の落ち込みを指しています。一般的に「うつ状態」という言葉を耳にしますが、精神科では「抑うつ状態」という用語を用いることが多いようです。
いくつ当てはまりますか?
- 気持ちが落ち込む
- 以前楽しめたことが楽しくない・世の中のことに関心がなくなる
- 食べる量や回数が減った・味がしない・おいしくない
- 寝つけない・夜中に何度も起きる
- 話すことも動くことも遅くなる
- 歯磨きや入浴がおっくうになりできない
- 「自分には価値がない」「こうなったのも自分のせいだ」と感じる
- 文章や会話の内容が頭に入らない
- 「死」について考える
「倦怠感・疲労感」「睡眠障害」などの著名な症状に加えて、「頭痛」「胃部不快感」「便通異常」「肩・背部痛」などの身体症状を伴う場合があります。
まずはご相談ください
現在の生活状況や症状と通院の有無、今まで行った治療などをお伺いして、
鍼灸施術が可能な場合があります。
鍼灸施術が可能な場合、鍼灸に期待できる理由
鍼灸施術が可能と確認できた場合、鍼灸に期待できる理由をご紹介します。
理由その1
苦悩する多くの身体症状は、鍼灸院で施術対象とされる症状が多い
うつ病患者さんの訴える症状の割合は精神症状よりも身体症状の方が多い・・・といわれてます。
渡部芳徳 他.うつ病にみられる身体症状. Progress in Medicine. 2010;30(6): 1703-1709この身体症状は「検査で異常なし」「自覚している症状が多い」という場合が多いようです。
一~二次医療圏の受診患者のうち15~53%は医学的に説明困難な症状・・・という報告もあります。
Creed F et al.(編),太田大介(訳).不定愁訴の診断と治療-よりよい臨床のための新しい指針-.星和書店,2-4,2014.
西山順滋.心療内科からプライマリ・ケア領域に発信できることは何か?.日本心療内科学会誌.2020;24:75-80.
具体的に、頭痛・めまい・耳鳴り・肩こり・腰痛・腹痛・便秘もしくは下痢などが症状です。
これらの症状は鍼灸院で想定される施術対象となる症状に近いということでもあります。
理由その2
(脳)中枢へのアプローチも同時に担える
検査では「異常なし」と判断されてしまう原因不明かつ多くの身体症状による痛み刺激が続いている、外傷や感染、慢性の心理ストレス・トラウマ、睡眠障害などが原因で、脊髄や脳内局所の微細な炎症が発生して、脳(中枢神経)の感受性が変化した状態であると考えられています。
また、うつ病により脳血流(脳代謝)が増加する部位、低下する部位があることが分かっています。
Drevets WC, et al: Neuroimaging studies of mood disorders. Biol Psychiatry 48: 813-829, 2000.
鍼刺激によりうつ症状の変化や脳血流が変化するという報告もあります。
Matsuura Y, et al. Improvement of prefrontal blood flow in a patient with major depressive disorder after acupuncture
evaluated by functional near-infrared spectroscopy: a case report. Acupunct Med. 2022;1:9645284221075355.
鍼灸は身体症状だけでなく脳の病態改善にも関与できる可能性があります。
施術を受ける前によくある質問
どのくらいの期間通えばいいですか?
「分かりません。」というのが無責任に思えるかもしれませんが、適切な回答だと思います。2番目に言えるのは施術可能状態だとしても「長期間(年単位)」だと想定されます。
また症状により、治療のゴールが異なってくる場合もあります。
海外の研究では1週間の中でなるべく頻回鍼灸を受けること、施術総数が多い方が効果が出やすいと言われています。Armour M, et al. Acupuncture for Depression: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2019;8(8).
個人差はありますが、週1回の鍼治療で平均すると8週くらいから効果が見え始めているようです。まず2か月から続けてみてはいかがでしょうか?
鍼灸を受けていれば病院に行かなくてもいいですか?
いいえ、そのようなことはありません。専門医の受診をしてください。
・「うつ状態」を引き起こす他の疾患もしくは処方箋などの可能性を否定するためにも受診を勧めています。
・“鍼治療は通常ケアと一緒に行うとよい”という研究報告もあります。MacPherson H et al. Acupuncture and Counselling for Depression in Primary Care: A Randomised Controlled Trial. PLoS Med. 2013;10(9):e1001518.
施術料金について
初回 7,000円(税込)
内訳
初回カウンセリング料 2,000円(税込)+施術料 5,000円(税込)
時間
初回カウンセリング 約30分+鍼灸施術 約90分 合計 約120分
2回目以降 5,000円(税込)
内訳
2回目以降は施術料5,000円のみ
時間
鍼灸施術 約45~90分
※お支払いは現金でのみお願いしています。
最後に院長から
うつ病の治療は鍼灸に興味を持ったきっかけであり、個人的な命題でもあります。2023年1月現在でも、うつ病の発症メカニズムは明らかになっていません。また、「これをすれば絶対に治る!」』という事は調べた限りではありませんでした。一気に短期間で治ったということもありません。
もし、症状で苦しんでいる方はご相談ください。治療に向けてお役に立てるかもしれません。