腰痛の原因
腰痛のうち、原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」といい、椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・圧迫骨折・感染性脊椎炎や癌の脊椎転移・大動脈瘤、尿路結石などの内臓疾患などの原因あります。それ以外の腰痛を「非特異的腰痛」といいます。
Deyo RA et al:What can the history and physical examination tell us about low back pain? JAMA 268: 760-765, 1992
非特異的腰痛は問診と徒手検査で、以下のように分類できます。
腰筋膜性:硬結を触れる(トリガーポイント)
腰椎椎間関節性:腰椎後屈後痛、ケンプ徴候、SLR
腰椎椎間板性:腰椎前屈時痛
仙腸関節性:ゲンスレン徴候、パトリック徴候
鈴木秀典ら:非特異的腰痛の診断と特徴. 四国整形外科学会誌29(2);171-174:2017
こんな症状なら病院へ
- 転倒などのあとに痛みだし、日常生活に支障が出る
- 横になってじっとしていても疼く
- 鎮痛薬を1ヶ月使っても痛みがとれない
- 肛門や性器の周囲が熱くなる、しびれる、尿がでにくい、尿漏れなどの症状がある
- かかと歩きが難しいなど、足の脱力がある
腰痛の病態
腰痛の原因として考えられるのは、
①.荷物などの持ち上げ、前屈み、捻り、不良姿勢などからくる脊椎への悪影響を与えています。
②.心理的なストレス(痛みへの強い不安・恐怖、仕事への不安、人間関係へのストレス)が脳に悪影響を与えてしまい、姿勢バランスの乱れや不活動(上記①)に繋がります。
Q.なぜストレスが慢性化だけでなく「ぎっくり腰」を起こすリスクも増やすのか?
A:心的ストレスが加わると、姿勢が悪くなり腰への負担が高まります。すると筋緊張を強くして、痛みの原因を作り出します。
具体的に
FDG-PETという脳の代謝を表せる機械で腰痛を理由に欠勤が長期化している患者群を調べてみると、前頭前野(記憶や感情の制御、行動の抑制など高度な精神活動に関わる部位)では機能低下、偏桃体海馬・海馬傍回(情動に関わる部分)では機能亢進を示しています。
本来、ヒトは痛みを緩和させる生体防御機能(下行性疼痛抑制系)が備わっていますが、痛みが持続したり、ストレスが強い場合はその機能が低下します。すると痛覚を抑制していた機能が低下するので痛覚が過敏になったり、自律神経系のアンバランスにより血管や筋にコリが生じてきます。
このように腰も、運動器(脊椎や筋肉)だけの問題ではなく中枢(脳)の問題も存在している場合もあります。